近心頬側第2根管の探索 (How to use the …)

DSC00715回も、近心頬側第2根管(MB2)のお話、近心頬側第二根管の発現率は、40%~70%といわれているが(数々の報告があり、人種や年齢でも違う。)、最近の自分の感覚ではやはり、60%程度はあるのではないかと感じる。とくに感染根管ではその原因となっていることも多いので、ここを探せるかどうかは、その歯を保存できるか、抜歯になるかの重要な分岐点になると思う。また、歯の症状はなくとも、歯性上顎洞炎の原因になっていることも多い。(歯の症状はないものの、鼻閉感や偏頭痛の原因となる。)

今回もレーザーを用いて近心頬側第2根管を探せた例を挙げたいと思う。この症例は何年か前に本院でしたものでした。まだ、CTや歯科用顕微鏡もなく、近心頬側第2根管を探すことも困難な時でした。案の定,膿が溜まってきて、咬んだらいたいと、、、すいません、DSC00718

レントゲンでは原因根が近心頬側根管のように思えたので、近心頬側第1根管の拡大不足もしくは近心頬側第2根管の存在を疑って治療を進めました。慎重に近心頬側部位のみを削除し、近心頬側第1根管を清掃しました。やはりここは、きちんと処置ができていました。そこで、近心頬側第2根管の存在を疑い、清掃をおこなうこととしました。まずは、怪しいところにレーザーを当てると、歯髄組織もしくは柔らかな象牙質が白濁しながら蒸散されます。

右の写真のティアドロップ形にみえる部分です。ここが近心頬側根管が横に伸びている”フィン”か、もしくは近心頬側第2根管とつながっている”イスムス”と呼ばれる形態なのです。(フィン イスムスでググるとやっぱり歯の解剖学が引っ掛かる、、)

DSC00722それを判断するために、先の小さなファイル(先端径0.08mm)で探索します。(レーザー処理では切削片が出ませんので、EDTA処理は不要ですが、奥の方向に探索しやすいように、あらかじめ、次亜塩素酸溶液で洗っておきます。)これで、ファイルが進む感じがあれば、イスムスと判断して、さらにレーザーで処理を行います。

経験的にですが、フィンもしくはイスムスは約45度程度の角度で近心方向に湾曲し、その後頬側方向に再度湾曲します。この第一湾曲と第二湾曲は0.5mm程度、長くても2mm程度の長さと非常に短く、この長さの部分をきちんと処理することが、近心頬側第2根管の処置の”ツボ”だと思っています。ファイルの先を押し込んで抵抗が強くなると第二の湾曲が近いので、無理をせず、ファイルを一旦抜いて、レーザー処理を行います。すると第一湾曲と第二湾曲の間が処理でき根尖まで容易に拡大ができます。あとは、これを滑らかにつないで拡大終了です!!

まあDSC00725、うちの歯科顕微鏡は安物かもしれませんが、歯科用顕微鏡(マイクロ)、レーザー、CTのコンビネーションは抜群ですね。自分でも、よくここまで処置ができるようになったものだと感慨深いです。(自画自賛~~~)

 

 

近心頬側第2根管の探索 (Er:YAGレーザーの応用2)

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これも、狭い根管上顎の6番近心頬側第2根管をEr:YAGレーザーにて探した症例、向かって左のほうに03、探したい場所があります。この根管はすでに、専用の超音波スケーラーにて探索中です。超音波スケーラーでもいいのですが、短所として、切削片がでて、根管孔が詰まる。なにより、先端径が大きすぎます。赤の線で囲ったところが、超音波スケーラーで削ったところ、、青い線で囲ったところが、怪しげなところで、もう切削片が詰まりかけてます。ここに、Er:YAGレーザーを用いて、歯質の蒸散を行い、根管を明示していきます。チップの先端は、0.4mmと細く、超音波スケーラーで削った窩洞より一回りは小さいことがわかります。赤いのはガイドで実際のレーザーではありません。Er:YAGレーザーは先端から、少量の水と風が出てます。レーザーでごく表層の歯質を蒸散しますので、削りかすは次々に洗われていきます。顕微鏡で覗きながらしてみると、まさに”根管が開いてきます”。これは、レーザーを軟組織、硬組織が混在した部位に当てていくと、最初に軟組織が蒸散されます。次に、硬組織が蒸散されるのですが、接線効果のように硬組織のエッジが蒸散されると思います。ですので、根管やフィンのありそうな部位にレーザーを当てると、まさに、現れてきます。今回の症例でも、切削片を除去しつつ、綺麗に根管が現れてきました。

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歯性上顎洞炎について

本院でもCTを導入してから、時間がたつが、CTを撮影してみると、歯性上顎洞炎という病気が意外に蔓延していることがわかる。原因は色々考えられるが、考えられるのは、”根管治療の成功率の低さ”だと思う。次に考えられるのは”耳鼻科との連携不足”であるように思う。

根管治療を困難にする要因は色々あると思うのだが、一つ要因としてあるのは、保健点数の低さは否めないのではないだろうか、また、それと最近になってインプラントの普及もそれに拍車をかけているように思う。根管治療は保険治療になるので、歯科医院の収入には全く寄与しないし、それどころか、時間ばかりかかって大赤字なのでこれを丁寧にするのはよほどの物好きでないとできないと思う(あれ?だれのことだ??)。確実に治ると言い切れない、もうからない治療(根管治療)と保険外治療で約30万程度するインプラント治療を歯科医院経営の立場から考えると、どちらを選択するであろうか? 火を見るよりも明らかである。けど、もし自分が患者だったらどちらかは、、、これもどちらを選択するかは明らかな気がする。

話がそれたのでもどすと、あとの要因として、CT無しには診断が困難だと思う。ただのパノラマとかデンタルX線では歯性上顎洞炎の診断は困難すぎるし、多分CT無しには歯性上顎洞炎と診断できても、どの歯が、また、どの根管が原因かわからないので、根管治療の成功率は低くなると思われる。Google で”歯性上顎洞炎”をキーワードに引いてみると、治療方法としては抜歯がかなり多いというか、実際根管治療を勧めている例はあまり見ない。多分に歯性上顎洞炎=抜歯もしくは内視鏡下副鼻腔手術という図式が成り立っているように考えられる。もちろんその背景にあるのは根管治療の低い成功率であると思う。

上記の根管治療を困難にする要因は、歯科用顕微鏡とCTの応用、さらには最近ではEr-YAGレーザーの応用にてほぼ解決できるようになったのではないかと考えている(Er-YAGレーザーの応用については、エビデンスはまだないと思うが、個人的には特に有用と感じている)。言い換えるなら、今までの方法では中途半端結果しかでない根管治療も歯科用顕微鏡、CTおよびEr-YAGレーザーの応用で確実な治療結果がでると考えられる。

次の、耳鼻科との連携の点であるが、これもまた、難しい~~。実際の症例で、約2年ほど歯性上顎洞炎に投薬のみを受けていた患者さんとか、耳鼻科>脳外科と受診しても原因不明とされてたりとか、歯性上顎洞炎が原発だと思うんだけど、耳鼻科で”手術と入院が必要!!”とか言われていたりとか、、、

”現代の歯性上顎洞炎”という本が書かれていたので読んでみたが、歯科医から見ても根管治療など丁寧に解説してある。インプラント周囲炎の話などは本当にすばらしい。しかし、読んでいて違和感を感じざるを得ないことがある。多分それは、筆者の先生の”根管治療への信頼感の低さ”だと思う。特に、最近の根管治療は丁寧にやれば治ることのほうが多いと思う。原因が歯であればまず、根管治療を行い、上顎洞に慢性炎症が残るなら耳鼻科的治療をするべきではないかと思うのだが。本の中にも触れてあるのだが、”上顎洞炎の原因が歯であると軽々に言わない”(無用の騒動の元)ありがたい言葉なんだが、もし、耳鼻科医と歯科がきちんと連携できていれば、お互いの治療の治療技術やその限界を理解しあうことができるなら、と考えるのだか、(現実はそんなに甘くないんだよな~~~~)

 

歯性上顎洞炎は歯科医がCTで確実に診断する、顕微鏡下できちんと根管治療する、耳鼻科でフォローしていただく、のがよろしいかと。

 

近心頬側第2根管の探索 (Er:YAGレーザーの応用1)

ホーム図

タイトルの通りなんですが、歯根の中の細い、細い空間のお掃除です。CTなどでまあ、予測はつくのですが、掃除はかなりむずかしい、汚れとかセメントとかを切削器具で掃除すると、切削片がつまるし、あまり水がでると視野が取れないし、そこで、Er:YAGレーザーを応用してみました。レーザーでの蒸散は歯質をそぎとるような感覚で、微細な幅を浅く、切削片を出さずに削ることが可能です。左図の黄色の中央あたりに近心頬側第2根管がありそうです。そこで、緑の線で囲んだところをEr:YAGレーザーで蒸散切削してみました。右図の白矢印で示した通り器具がはいっていきました。やれやれ、

歯性上顎洞炎?

CTを撮らせていただくと、思いがけないものが映ることが多々ある。特に上顎の6番ではある。この歯に根尖病巣があると、歯の症状はなくとも鼻に症状が出ることがおおく、鼻炎が引かないとかの、上顎洞炎の原因となる(歯性上顎洞炎)。この場合、抗生剤も一時的なもので、あまり効果もないことが多く、原因が歯の場合は原因歯の治療が一番効果だとおもわれます。(原因を叩かずして治るはずがない)

しかしながらこのあたりの治療は診断から治療まですべてが困難です。

  1. 診断の困難さ。一般にパノラマとかデンタルとか言われるx線では歯性上顎洞炎と一般的な副鼻腔炎の鑑別はかなり困難であるとおもいます。そこでCTで根尖部を詳細に精査して判断します。逆にいうと歯科用CTでの原因歯の撮影が必須です。
  2. 治療の困難さ 簡単な治療でなおればいいのですが、抜歯せずに治療するのはかなり困難です。言い換えるなら、根管治療がかなり難しいのです、特に上顎6番の近心頬側第2根管は歯科用マイクロスコープがあっても困難です。ここも逆説的にいうならマイクロスコープがなければ、絶対無理といえます。
  3. 上顎6番の近心頬側第2根管は統計的には約60%の確率で存在するそうですが、なんせ細くて、0.08mmの器具を挿入するのも大変です。>>根気が必要です。これについてはEr-YAGレーザーによる歯質の蒸散が適しているような気がしますが、まだ、未検討でレーザー自体がかなり高価です。

CTとマイクロのコンビネーション その4

大学の同期の先生からの紹介でした。ある患者さんが症状がひかないので困っていると、、、(治療したのはまた別の先生で、患者さんから、相談をうけたらしい、)でなぜか、まわってきたと、  来る者は拒まず、ただ直すのみですね。

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なんとなく、むかって右のほうの上顎洞は曇ってます。CTでみてみるとシュナイダー膜の肥厚も見られます。CTからは確実に病巣はありますし、まあ、位置的にはMB2の存在も考慮しなければなりません。前医の先生はCTも撮影して奥の7が原因と診断されて、、まあ、大丈夫だからとクラウンをいれたとか、、、、、、

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クラウン(自費でした)を外してメタルコアも頬側根のみ外しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

2014_11_28_103331_0000_20141128_000で根管治療中、口蓋根には病巣がなかったことと、患者さんが大枚をはたいてクラウンを入れていて、また使いたそうだったので、口蓋のメタルコアは外してません。頬側第二根管を見つけて、ここを拡大、洗浄してお薬いれて症状が引くのをまちます。CTでみても、シュナイダー膜の肥厚が取れてますし、患者さんも症状が引いたとのことでした。遠心根は前医の先生がやや、拡大しすぎていたようなので、MTAで根充して終了です! 。症状もとれて、患者さんも満足していただきました。僕もこのような困難症例がきちんとなおせて自分のスキルアップを確認できた症例でした。

この症例も、CTでの診断=MB2の存在、マイクロスコープ下での治療=MB2の清掃・拡大 この2点がなければ決して治らない症例だったと思います。

CTとマイクロのコンビネーション その2

今回もCTがなければ診断が困難で、マイクロがなければ治療できなかった症例です。

術前
術前

術前ですが、右上6番に違和感、咬合痛がありました。口蓋根には破折したポストも残っていましたが、これは難なく除去できました。根管も全部きれいにしたつもりなのですが、違和感が消えない、、ということでCT撮影を行いました。

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CTを撮影してみると、なんと、、パノラマやデンタルx線では不明瞭でしたが、明確な病巣が近心根にありました。しかも、近心頬側根が2根ありました。マイクロでもう一度確認し、なんとか、探しだして根管充填を行いました。

術中のCTでみると、上顎洞のシュナイダー膜の肥厚もなくなり、症状も消えました。

710.033710.032その後、根管充填を行いました、近心頬側第二根管はNTコンデンサーで、その他の根管はCWCTで行っています。